1 野に咲く名無し@転載禁止 (47e039e7) 2024/08/19 (月) 20:24:58.384 ID:1Er9HkCCO主
八月の終わり、蝉の声が遠くに聞こえる墓地で、当時小学生の私は祖父母の墓参りをしていた。手を合わせた後、帰ろうとすると、見知らぬおねえさんに声をかけられた。「これ、余ったからどうぞ。」彼女はそう言って、カーネーションとユリの花を差し出してくれた。
その花を手にした瞬間、なぜか胸が少しだけ高鳴った。花を祖父母の墓に供えるべきか迷ったが、何となくそれができなかった。代わりに、家に持ち帰り、花瓶に差して飾った。
彼女の優しい笑顔と、そっと触れた指先の温もりが頭から離れなかった。花を見るたびに、その一瞬の出会いが蘇り、淡い期待が心の中で膨らんだ。
しかし、時は待ってくれない。カーネーションとユリの花は、八月が終わるとともに静かに枯れていった。それを見て、私はその夏の一瞬のときめきも、同じように消えてしまったのだと気づいた。枯れた花を捨てるとき、心の中にほんの少しの寂しさが残ったが、それもまた夏とともに過ぎ去った。