詩を詠む (17)

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1 野に咲く名無し@転載禁止 (fc550906) 2024/09/20 (金) 20:07:03.700 ID:X59fAK0TO主

「来ました」
「詠みますね」
https://i.imgur.com/SxNhKlQ.png

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2 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:07:18.659 ID:X59fAK0TO主

「死なない蛸」
「萩原朔太郎」

3 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:07:48.002 ID:X59fAK0TO主

 或る水族館の水槽で、ひさしい間、飢ゑた蛸が飼はれてゐた。

4 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:08:09.451 ID:X59fAK0TO主

地下の薄暗い岩の影で、青ざめた玻璃天井の光線が、いつも悲しげに漂つてゐた。

5 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:08:21.501 ID:X59fAK0TO主

 だれも人々は、その薄暗い水槽を忘れてゐた。もう久しい以前に、蛸は死んだと思はれてゐた。 そして腐った海水だけが、埃っぽい日ざしの中で、いつも硝子窓の槽にたまつてゐた。

6 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:08:40.272 ID:X59fAK0TO主

 けれども動物は死ななかった。蛸は岩影にかくれて居たのだ。

7 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:09:00.788 ID:X59fAK0TO主

そして彼が目を覚(さま)した時、不幸な、忘れられた槽の中で、幾日も幾日も、おそろしい飢饑を忍ばねばならなかつた。どこにも餌食がなく、食物が全く尽きてしまつた時、彼は自分の足をもいで食つた。

8 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:09:14.515 ID:X59fAK0TO主

まづその一本を。それから次の一本を。

9 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:09:26.924 ID:X59fAK0TO主

それから、最後に、それがすつかりおしまひになつた時、今度は胴を裏がへして、内臓の一部を食ひはじめた。少しづつ他の一部から一部へと。順々に。

10 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:09:40.995 ID:X59fAK0TO主

 かくして蛸は、彼の身体全体を食ひつくしてしまった。外皮から、脳髄から、胃袋から。どこもかしこも、すべて残る隈なく。 完全に。

11 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:10:02.791 ID:X59fAK0TO主

 或る朝、ふと番人がそこに来た時、水槽の中は空つぽになつてゐた。曇った埃っぽい硝子の中で、藍色の透き通った潮水と、なよなよした海草とが動いてゐた。

12 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:10:18.429 ID:X59fAK0TO主

そしてどこの岩の隅隅にも、もはや生物の姿は見えなかつた。蛸は実際に、すっかり消滅してしまつたのである。

13 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:10:29.350 ID:X59fAK0TO主

 けれども蛸は死ななかつた。

14 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:12:56.420 ID:X59fAK0TO主

                             ○○○
彼が消えてしまつた後ですらも、尚ほ且つ永遠にそこに生きてゐた。

15 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:13:25.480 ID:X59fAK0TO主

古ぼけた、空つぽの、忘れられた水族館の槽の中で永遠に――おそらくは幾世紀の間を通じて――或る物すごい欠乏と不満をもつた、人の目に見えない動物が生きて居た。

16 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:13:45.589 ID:X59fAK0TO主

「ありがとうございました」
「またきますね」
https://i.imgur.com/SxNhKlQ.png

17 野に咲く名無し@転載禁止 2024/09/20 (金) 20:22:14.345 ID:a7MwCPCe0

欠乏かあ